若くて持ち家 借金も膨らむ 20~30代「賃貸より得」

若くて持ち家 借金も膨らむ 20~30代「賃貸より得」

若い世帯の借金が膨らんでいる。2018年の20~30代の負債残高は政府による現行調査が始まった02年以降で最高となった。持ち家志向が強く、住宅ローン残高が増加している。ローン金利の低さなどから「賃貸住宅に住むよりも得」と判断した人が多いが、負債を抱えたことで普段の消費は節約に努める傾向が見える。(中村結)
JR横浜駅から私鉄で5分ほどの住宅地。会社員の女性(37)は延べ床面積100平方メートル超の戸建て住宅を建設する計画だ。家族4人で暮らすマイホーム。今住む社宅から年内に移る計画だ。
女性は同じ条件の住宅を借りた場合の月間コストを計算した。住宅ローンを借りて購入する方がおよそ10万円安いという結果になり、「持ち家が得」と判断した。「働いているうちに住宅ローンを払い終える」という計画で、退職した後は売却する選択も思い描く。
彼女のような30代までの人による戸建てやマンションの購入が活発だ。日本総合研究所の根本寛之氏が国勢調査を基に調べたところ、00年に46.6%だった30代の持ち家比率は15年に52.3%まで高まった。
これに合わせて若い世帯が抱える住宅ローンも増えた。総務省の家計調査(2人以上の世帯)によると、世帯主が30~39歳の家計の全負債額は18年に1329万円と、調査が始まった02年以降で最高。02年比で1.8倍だ。29歳以下も675万円と2.7倍になった。
一方、50代の世帯の負債額はほぼ横ばいの傾向にある。根本氏は「持ち家比率の上昇は若年層に限られる」と指摘する。
日銀の超低金利政策による住宅ローン金利の低下で購入を決めやすくなったことが知られるが、原因はほかにもある。
一つには企業が社宅や賃貸補助を減らしたことが影響している。経団連によると企業の住宅関連の福利厚生費は17年度に従業員1人当たり月1万1436円。ピークの96年度に比べ3割減った。低負担で賃貸住宅に住みながら貯蓄する機会が減り、購入に踏み切るタイミングが早くなった。
第一生命経済研究所の星野卓也氏は「大都市への人口集中が続き、都心の不動産は価値が下がりづらいという見方が購入動機になっている」と推測する。ある都内のタワーマンションの営業員は「山手線の内側は下がりにくい」という売り文句で取得を勧めている。
このように生涯のコストを考えて購入しながらも、日常生活では節約を迫られる若者が多い。可処分所得に対する消費支出の割合を示す消費性向について内閣府は「若年層は低下傾向にある」と指摘し、理由として住宅ローンで支出の余力が落ちていることを挙げる。
日本政策投資銀行は総務省による5年に1度の全国消費実態調査を基に2人以上の勤労者世帯を分析した。1999年には住宅ローンのある世帯の方が住宅ローンのない世帯より消費支出が多かったが、04年に逆転。14年にはローンのある世帯が月31万3千円だったのに対し、ローンなしの世帯は33万1千円だった。
今は低位で安定している金利が上がれば、ローンを抱える世帯がさらに消費に慎重になる可能性もある。住宅金融支援機構の調査によると、18年10月~19年3月に変動金利で借りた人の割合は60.3%と過去最高。10年前に比べると15ポイント以上も高くなっている。
18年の家計調査によると、世帯主が30代の家計の負債(1329万円)に対して貯蓄は631万円だ。負債は貯蓄の2.1倍で、10年前の1.3倍から急拡大した。
2千万円の老後資金が必要とした金融庁金融審議会の報告書。計画的に資産をつくる必要を訴える狙いだったが、「30~40代は負債超過で資産形成どころではない」と指摘する声も上がった。
多重債務など社会問題になった場合を除くと、個人の債務は政府や企業に比べ政策の論点になりにくかった。低金利がもたらした若い世帯の債務増加は、そんな状況を変えるかもしれない。

ブログトップへ

お役に立てましたら、応援お願い致します!

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。