BCP策定 大手先行 企業の備え動き鈍く

BCP策定 大手先行 企業の備え動き鈍く

昨年7月の西日本豪雨から6日で1年。被害の大きかった広島県や愛媛県内の企業は、サプライチェーンの見直しや「事業継続計画(BCP)」策定に動き始めた。国や県もBCP策定の支援をする一方で、「ただの書類づくりで終わってしまう」との懸念が行政や民間にある。大雨が降りやすい時期を迎えつつある今、同程度の豪雨災害が起こった際にBCPが有効かどうかを検証する取り組みが求められそうだ。
マツダは直接の被災はなかったが、取引先の部品メーカーが被災したことで生産を一時停止した。反省を踏まえ、今春から取引先の部品メーカーのリスク調査を始めたことを2日の記者会見で明らかにした。2次取引先などを含めた末端までの全部品会社が対象で、災害がサプライチェーンに与える影響をいち早く把握することを目指す。
リスクの強弱は、生産拠点の分散度合いや製造工程の難しさなどから算出する。調達がストップするリスクの高い部品については、同業者への協力要請や海外からの調達などの対策を考える。
災害時に柔軟に生産体制を変えられるよう、生産計画も見直した。これまでは2024年3月期に現在より2割多い約200万台の販売を目指していたが、25年3月期に約180万台と下方修正した。フル稼働で想定していたが、余裕を持たせる。「想定できない被害にどう備えるかが、最も大事だ」(菖蒲田清孝取締役専務執行役員)
西日本豪雨は交通インフラにも大きな打撃を与えた。教訓を生かし、今年に入ってからBCP策定に本腰を入れ始めたのは芸陽バス(東広島市)だ。田島悦雄取締役は「1931年の創業以来、ほぼ初めての全面運休だった」と1年前を振り返る。広島県東広島市を中心に広島市、三原市、竹原市など計48路線のすべてが運休となった。
損害保険会社の勉強会への出席から始め、幹部を集めた毎月の会議では社員180人の安否確認や食料備蓄の方法などを検討してきた。このほど「営業所の3分の1、本社の2分の1の社員が72時間しのげるだけの食料や水を発注した」(一橋浩文取締役)という。
今後は事前の災害情報を受けて計画運休なども検討する。日々の業務に追われて「手探りの取り組みが続くが、今夏の状況も見つつ年内には一定のBCPを確立したい」(田島取締役)考えだ。
小売業大手でも従来の行動指針を見直す動きが加速している。
イズミはこれまで、災害時にも原則として店舗を営業し続ける方針を貫いていた。ただ、昨年の豪雨による想定以上の被害を受けて、昨夏から全住民が対象となる「レベル4」の避難勧告が出た場合、エリア内の店舗を休業する方針に変えた。
サプライチェーンの見直しについても検討を重ねている。西日本豪雨の際に道路が寸断された呉市の店舗へはフェリーを使って物資を輸送した。フェリーが使えたのは呉市が港町だったからで「あくまで応急策。一律の横展開は難しい」(同社)。ヘリコプターを使った輸送も今後は検討するという。
ホームセンターのDCMダイキ(松山市)は、災害時に備えた商品の備蓄を全店舗で始めた。貯水用のポリタンク、カセットコンロ、電池・電灯など、住民のライフラインに関わる商品は、災害発生から2日分の販売に対応する量を日ごろから用意することにした。
地域経済をけん引する大手企業や、生活に密接に関わる交通事業者、小売りなどでBCP策定が進む。だが、中国5県での計画策定の動きは鈍い。帝国データバンク広島支店が中国5県に本社を置く企業525社を対象にした調査では、BCPを「策定していない」と答えた企業が49.5%となった。
BCPを策定していない理由としては「策定に必要なスキル・ノウハウがない」「策定する人材を確保できない」とする声が多かった。かつてない水害の経験で防災や減災に対する意識は高まっているものの、「目先のことに追われて考える余裕がない」(岡山県の繊維製品製造)と、1年を迎える現在でも対策は道半ばだ。
BCPの有効性を検証
「広域で停電が発生し、鉄道は運休。ネットワーク環境も遮断されたとします」――。6月末、広島県が市内で開いたワークショップには県内企業30社あまりが集まった。被災の場面を設定し、それぞれの企業が策定したBCPの有効性を参加者同士で検証し合った。
「守るべき経営資源は何か」「どの順番で設備の破損状況を確認するのが効果的か」といった議論が業種をまたいで積極的に交わされた。一方で「部署ごとに異なる社内の意見をどう取り込めばいいか分からない」という不安の声も聞こえた。
広島県ではBCP策定支援に加え、災害を想定した図上訓練を広島市、福山市などで順次、開催している。県の商工労働局は「計画の策定だけでは不十分。実際に運用できるかの検証を通して、新たな課題や不安を掘り起こすことが必要だ」と指摘する。
今後発生しうる災害や被害の大小を正確に予想することは難しい。BCP策定はもとより、現状の計画の効果検証など継続的な見直しが求められそうだ。

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