過熱するAI人材争奪戦 会社丸ごと買収も

過熱するAI人材争奪戦 会社丸ごと買収も

人工知能(AI)などに精通する高度なIT(情報技術)人材の獲得競争が過熱している。ソニーがデジタル人材の初任給引き上げに動くなど好待遇で募集をかける企業が増えている。ただ待遇だけで必要とする人数の確保は難しい。技術者を擁するスタートアップ企業のM&A(合併・買収)や社内研修など、採用や育成の手法を多様化し人材不足に対応する考えだ。
■先端人材、30年に55万人不足
「ここ2、3年で専門職に高い給与を支払うことにためらわない会社が増え、明らかに雰囲気が変わった」。ソニーの人事担当者はデジタル分野で高い能力を持つ新入社員の年間給与を最大2割増しにする制度の背景をこう説明する。2019年度から適用し、このほど幹部社員に人事制度を改定する通知を始めた。
あらゆる産業にデジタル化の波が押し寄せる中、AIの技術者やデータ分析の専門家である「データサイエンティスト」、サイバーセキュリティー人材などの需要は高まっているが、供給が追いついていない。経済産業省によると、IT人材の不足数は18年時点で22万人に達する。同省の試算では、先端IT人材に絞っても30年に55万人足りなくなる恐れがあるという。
厚遇で外部から人材を呼び込む動きは広がる。NTTドコモはAIなどの専門性を持つ人材に対し、最高で同社の平均年収の3.4倍にあたる3千万円を提示して今夏にも社外から募集を始める。研究開発部門やエンターテインメントなど非通信分野を対象とする新たな人事制度を設けた。
1年契約の年俸制で、採用時に前職での実績などをもとに個別に報酬額を決める。現役社員も応募でき、高額年俸で優秀な人材を確保する。
M&Aを活用する動きも出てきた。京セラの子会社、京セラコミュニケーションシステムは1月、AI関連技術を手がけるスタートアップのRist(リスト、東京・目黒)を買収した。リストは深層学習(ディープラーニング)や機械学習などの画像システムの開発、データ解析などを手がける。人材や技術を取り込み、サービスや製品の強化につなげる狙いがある。
電通もAI開発のスタートアップを買収した。榑谷典洋執行役員は「AI技術を持つ会社を子会社として持つことが優位性につながる」と話す。
■ダイキン、阪大と組み1000人育成
すでに社内にいるIT人材を高度化しようと、研修を実施する企業も増えてきた。システム開発の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は今年3月から選抜したエンジニア向けにさらに高度なデータ分析やAI開発などの技術を学べる研修を始めた。東京海上ホールディングスも保険ビジネスに活用できる「データサイエンティスト」を養成するプログラムを5月に開講している。
ダイキン工業は大阪大と組み社内講座を設けており、20年度までにAIなどに詳しい人材を1000人育成する方針だ。
逆にこうした企業のニーズを取り込もうと、技術を外販する企業もある。LINEは19年上半期中に自社開発のAI技術を外部に有償で開放する。AI人材が不足する中、まずは言語解析の技術を共有する。開発の専門家がいない企業でもAIが自動回答する「チャットボット」の開発などに生かせるようにする。
課題もある。AI人材を確保できても経営層のITへの理解度が低ければ活躍の場を提供できず、人材が定着しない。
PwCジャパングループが17年にまとめた世界の最高経営責任者(CEO)意識調査では、日本企業のデジタルやテクノロジーに対する関心が世界で最低水準だった。AI人材が常に最新の技術を学べるよう、技術者に兼業や副業を解禁するといった働き方の見直しもセットで取り組む必要がありそうだ。
■転職市場、賃金上昇続く
転職市場では、データ分析の専門家や専門システム技術者といった人工知能(AI)関連人材の賃金が上昇している。市場ですぐに確保できる人材は限られ、給与が上がる傾向が続きそうだ。
英系人材サービス大手ロバート・ウォルターズ・ジャパン(東京・渋谷)によると、データ分析の実務にたけたデータサイエンティストやデータアナリストの転職時の年収は、2018年が800万~1500万円。16年に比べ高収入者の水準が400万円(3割強)切り上がった。
システム開発を統括するプロジェクトマネジャーも収入の高い層の金額が2年で100万円(約7%)高くなった。「今後も1~2割程度は賃金が上昇していく可能性がある」(ロバート・ウォルターズ・ジャパン)
AI開発の技術者の賃金も上がっている。英人材サービス大手ヘイズのまとめでは、18年の年収は600万~1200万円。前の年(600万~1000万円)に比べ、収入上位層を中心に2割上昇した。
技術者の転職支援サービスを手掛けるメイテックネクスト(東京・台東)によると、AIやデータマイニングに詳しい人材の4月の求人件数は335件。自動車や電機など大手製造業が中心とみられ、前年同月の約1.8倍に増えた。
プロ人材を囲い込む動きが強まり、転職を検討する技術者は少ない。「紹介したくてもAI人材の蓄積がない状況」(メイテックネクスト)だ。技能者の獲得には提示年収を引き上げざるを得なくなっている。

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