外貨建て保険 販売是正に重い腰

外貨建て保険 販売是正に重い腰

顧客から「利回りやリスクの説明が不十分」との苦情が増えていた外貨建て保険。生命保険会社や銀行は問題が指摘されてから1年以上たってようやく販売方法の見直しに乗り出した。保険商品をつくる生保と売り手の銀行の双方に顧客に説明する責任感が欠けていたところに、外貨建て保険が収益源として浮上。顧客にリスクをきちんと理解してもらう体制づくりが置き去りになった。
苦情5年で3倍
東日本に住む60歳代の男性は2016年秋、銀行で外貨建て保険の勧誘を受けて契約したが、その後の円高で元本割れが発生した。「元本保証と聞いたのに」。男性は銀行に苦情を言い、「言った」「言わない」のトラブルになった――。
生命保険協会が2月15日に公表した調査結果によると、外貨建て保険に関するこんな苦情は17年度に1888件と5年前の3倍に増えた。
苦情原因の77%は「販売時の説明が不十分」というもので、より具体的な内容をみると「元本割れリスクについて適切な説明を受けていない」(43%)が最も多い。
外貨建て保険の販売を巡る問題は17年12月に国民生活センターが「説明と契約が異なっている」「クーリング・オフをしても為替差損で損失が発生する」といった苦情があると公表。金融庁も18年9月に公表した行政方針で、投資信託などと比べて運用コストや実質的な利回りが分かりにくいことを指摘していた。
だが生保や銀行はなかなか改善しようとせず、ようやく重い腰を上げたのは18年の年末。金融庁幹部が同年11月に大手生保を呼び出して「我々の問題意識がうまく伝わっていないのか」と見直しを強く迫ってからだ。
今年1月以降、生保と銀行各社は顧客に外貨建て保険の内容を説明する際は、実質的な利回りや為替リスクなどを説明する資料をそろえ、高齢の顧客には契約時に親族の同席を求めるといった対応を決めた。
販売をめぐる問題が指摘されてから1年以上も放置してきたのは、保険商品をつくる生保にも、これを販売する銀行にも、顧客に対する責任感が欠けていたためだ。
窓販、直販上回る
銀行は顧客対応に逃げ腰だった。2月初旬、金融庁の「怒り」を受けて契約済みの顧客に説明する体制をつくろうとしたが、その実施主体を銀行ではなく生保にする案も議論し始めた。これには生保側が「何のために高い販売手数料を払っているのか」と押し返して銀行が顧客の前面に立つことで決着したが、「販売ありき」の銀行の実態を浮き彫りにした。
生保側も保険を売ってくれる銀行に遠慮があった。外貨建て保険は生保の職員も売るが、銀行窓口で販売するほうが多い。顧客の苦情も9割は銀行での販売に対するものだ。銀行の売り方に大きな問題があることは明らかだったが、生命保険協会がこの問題を分析した資料は「(苦情の差の背景に売り方の)実態等に差があるのか」と遠回しに指摘するだけだった。
業界推計によると、外貨建て保険の銀行窓口での販売額は17年度に3・2兆円を超え、18年度はそれを上回るペースだ。
マイナス金利政策の下で16年春に円建ての貯蓄性保険の販売停止を余儀なくされた生保各社にとり、高めの利回りをアピールできる外貨建て保険は貴重な稼ぎ頭だった。日本生命保険の18年4~12月期の銀行での販売件数は4万件を超え、円建て保険の18倍に上る。
銀行にとっても市場環境に左右されやすい投資信託の販売と比べ、保険販売の手数料は手堅い収益源だ。18年4~12月期は投信の販売手数料を上回る銀行が相次いだ。
ただ市場の急成長に伴い、為替リスクがない円建て商品が主流だった時代には表に出てこなかった銀行窓販のずさんな体制が表面化した。貴重な収益源ゆえに生保も銀行も改革が後回しになり、高齢者を含む多くの顧客にしわ寄せがいった。
「顧客と向き合う銀行が最後まで責任を持つ立場というのは、まぎれもない事実」。2月14日、この問題の責任の所在を問われた全国銀行協会の藤原弘治会長(みずほ銀行頭取)はこう述べた。
目先の収益を優先する販売姿勢を改めない限り、銀行や生保は「顧客の信頼」という最も重要な収益基盤を失うことになる。

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