世界のETF市場 10年で6倍に 低コストが誘因

世界のETF市場 10年で6倍に 低コストが誘因

上場投資信託(ETF)が世界の金融市場を席巻している。英調査会社ETFGIによると、資産規模は2018年末で約4兆8100億ドル(約530兆円)と、10年間で6倍に増えた。低コストと透明性の高さが投資マネーを引き付けている。投資家のニーズに応じて運用の高度化も進み、質と量の両面で運用の台風の目となっている。
ボストン・コンサルティンググループなどによると、ヒトが指図せず機械的に運用される資金は、世界で17年に約17兆ドル(約1870兆円)だった。現在は2000兆円規模に拡大した可能性がある。そのうちETFが約4分の1を占める。
世界最大のETFは米ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが設定する「SPDR S&P500」ETF。米S&P500株価指数に連動し、純資産は2600億ドル(約28兆円)にのぼる。
最近増えているのが、ETF運用会社や指数算出会社などが開発した独自の指数に連動するETFだ。S&P500のような単純な指数では、投資家の多様なニーズに対応しきれないためだ。
株式相場が急落した年末年始に、世界の投資家の注目を集めたETFがあった。米カンブリア・インベストメント・マネジメントが運用する「テールリスク」ETFだ。
テールリスクは「確率は低いが起きたら影響が大きい」という意味。株式市場のボラティリティー(変動率)が低いうちに、将来の株価下落に備えた「保険」の役割を果たすプット(売る権利)を買い増し、相場急落に備える。
昨年末の急落時、投資マネーが流入し、残高が1カ月で5割急増。1月4日の米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の「ハト派」発言の後、残高は再び昨年12月中旬の水準に戻った。
米ヴァリデア・キャピタル・マネジメントの「マーケットレジェンズ」ETFは、ウォーレン・バフェット氏やベンジャミン・グレアムなどの「伝説の投資家」の運用手法をモデル化して銘柄選別するとうたう。上位にはIT関連の米サイネックスなど中小型株が並び、隠れた優良銘柄を発掘する姿勢がうかがえる。
米アクティブ・ウェイティング・アドバイザーズが運用する「USポリシーアルファ」ETFは、米政策が追い風となり成長が見込める企業に投資する。上位に並ぶのが保険の比較・加入サイトを手掛けるイーヘルスなどヘルスケア関連。昨年の米中間選挙で医療保険制度改革法(オバマケア)が維持される公算が大きくなった影響がある。
ESG(環境・社会・企業統治)投資も広がる。「インパクトシェアーズ」シリーズは、人種差別や女性差別の解消に前向きな企業に投資し、社会への好影響(インパクト)を狙う。性的少数者(LGBT)差別の解消に取り組む企業に投資するETFもある。
投資家層も広がっている。ETFは流動性の高さや投資単位の低さから個人やヘッジファンド、証券会社の売買が多かった。足元では年金基金や保険会社など機関投資家の利用が広がっている。
英国北東部ティーズサイド。同地域の地方公務員年金基金は、資産約38億ポンド(約5500億円)のうち内規で10%までのETF投資を認める。
投資先は「US石油ファンド」ETFだ。原油はWTI先物など先物取引が一般的だが、証拠金の差し入れや定期的な決済の手間を省けるメリットがある。
「18年はアクティブ運用がより低コストのインデックス運用の成績を下回るケースが多かった」(ブラックロック・ジャパンの越前谷道平ETF事業部長)。運用の収益率低下に伴ってコスト意識は高まっており、ETFへの追い風は強い。
ただ大規模化に伴い、市場に与える影響力も増している。アセットマネジメントOneの酒井義隆ファンドマネジャーは、ロボットと自動化関連銘柄を対象とするテーマ型ETFへの大規模な資金流入で、18年初に安川電機などの株価が実力以上に高騰したとみる。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の中川和哉ストラテジストが注目するのが(通信や食品などの)低ボラティリティー(変動率)銘柄の値動きだ。「こうした銘柄は売買回転率が低いためにETFからの資金流入の影響を受けやすい」。
ステートのジェイムス・ロス・グローバルSPDRビジネスチェアマンは「ETF市場は25年に25兆ドル(約2750兆円)に拡大する」と予測する。この予測が的中すれば、ETFの影響力は格段に大きくなる。

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