原油安どこまで 2019年もトランプリスク

原油安どこまで 2019年もトランプリスク

WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は20日、1バレル45ドル台と前日比3%下げ、1年5カ月ぶりの安値をつけた。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ姿勢をめぐって世界の投資マネーが疑心暗鬼になり、リスク回避に動いている。原油相場から資金を引きあげる動きが続く背景には、より広い供給過剰への不安感がある。
要因はいくつかある。まずOPEC主導の協調減産に対する不安だ。OPECと非加盟国は7日、19年1月から日量120万バレルを減産すると決めた。このうちロシアなど非加盟国が担う40万バレルを疑う声が強い。
「減産が実際に行われるのか、行われたとしても、世界の原油需給を引き締める効果があるのか。不透明だ」。野村証券の大越龍文シニアエコノミストは市場の評価をこう総括する。1月の協調減産の実態は2月に出てくる統計を見るまで分からない。
もちろん、OPECを主導するサウジアラビアが踏み込んで減産すれば、市場が警戒する過剰感は解消される可能性がある。国際エネルギー機関(IEA)は13日、19年第2四半期(4~6月)に世界の原油需給は供給不足になると予測した。
それでも買いの手が入りにくいのは、原油市場を取り巻く変数が多すぎて、先が読めないからだろう。
19年の前半には、原油市場を直撃する「タイムリミット」が毎月のようにやってくる。
3月1日には、米中貿易戦争を巡る両国の通商協議の期限が訪れる。妥協策を見いだせなければ、米国は2000億ドル(約23兆円)分の中国製品に追加関税をかける。世界最大の原油輸入国、中国への打撃は必至だ。需要の鈍化は原油先物の売りを呼ぶ。米国による制裁が減速しつつある中国景気にさらにダメージを及ぼしかねないとの懸念から、売りが先行しやすくなっている側面もある。
19年も引き続き世界の金融市場は、米中摩擦の動向に大きく影響されそうだ。「米中激突→世界景気の減速」を意識させる経済指標の発表などをきっかけに、世界の主要市場で株価が急落すれば、リスク資産の原油にも売りが広がる。
米ダウ工業株30種平均、日経平均株価は調整色を強め、それぞれ18年の高値から2割弱安い水準で年初来安値圏にある。「株価が調整局面に入るとなると、原油の下げは深くなる」(日産証券の菊川弘之主席アナリスト)。世界の金融市場でリスクオフが鮮明になり、売りが売りを呼ぶ悪循環に陥れば、原油相場は一時的に1バレル40ドル台前半に向かう可能性がある。
米中の通商協議が決裂を免れても、摩擦の長期化に伴う不透明感はくすぶる。
次のタイミングは19年5月初めだ。米国による対イラン経済制裁が再び焦点になる。
トランプ米政権は今年11月初め、イラン産原油の禁輸の適用除外を8カ国・地域に認めた。米中間選挙を前に、有権者が嫌うガソリン高を避けるための措置と受け止められた。適用除外の期間は180日間だった。期限が迫れば、なし崩し的に全面禁輸を先送りする可能性もある。
イランの輸出がさほど減らないなら、需給の緩みが意識される。逆に完全にイラン産を市場から締め出す場合は価格に上昇圧力がかかる。この局面で仮にリビアなど政情不安の産油国の供給途絶が重なった場合、原油相場が急騰してもおかしくはない。「イラン産原油の禁輸+産油国の供給問題」という事態になれば、一時的に70ドルを目指す展開もありうる。
問題は米中貿易戦争、対イラン制裁とも、米国がどこまで強硬姿勢をとるかがトランプ氏の腹次第で、すっきりとした決着が想定しにくいことだ。
米トランプ政権の通商・外交政策が及ぼす影響に加え、原油相場の波乱要因となりそうなのが、米国のシェールオイルの生産動向だ。
シェール勢の採算ラインは45ドル前後とみられている。上昇相場で増産に動き、下落相場では供給を絞る米シェール勢の動向は台風の目となってきた。
こうした複数の要因を考え合わせると、19年前半の原油相場は3月、5月とやってくるタイムリミットをにらみながら50~60ドルを中心に一進一退となる相場を予想する声が多い。日本エネルギー経済研究所は21日の報告会で、19年上期の北海ブレント原油を平均で65ドルと予測した。今の価格差を前提にするとWTIでは56ドル台になる。
トランプ氏は18年、原油価格の低下を「米国と世界にとって大きな減税」と手放しで歓迎し、ツイッターで重ねて原油高をけん制してきた。OPECの盟主であるサウジアラビアは、こうした「口先介入」を重ねるトランプ氏の機嫌に配慮せざるを得ない。
OPECは例年6月に開く定時総会を、19年は4月に前倒しした。米中を中心に不穏なムードが漂う世界の政治・経済情勢に応じて軌道を微調整するためだ。
カタールがOPECを1月に脱退すると表明するなど、産油国カルテルの結束にはほころびの兆しが見える。OPEC自体も、原油需給の変化や様々なリスクを読みあぐねる難しい情勢になっている。

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