消えゆく個人投資家 70歳以上保有 110兆円の行方

消えゆく個人投資家 70歳以上保有 110兆円の行方

「貯蓄から投資」は2018年も逃げ水だった。

1860兆円に膨らんだ家計金融資産の過半は預貯金で眠り続け、ソフトバンク(SB)上場も不発。

アベノミクスの刺激の下、6年続いた年間株価上昇も途切れる。

底流には猛スピードで進む高齢化という地殻変動があるだけに、バトンタッチを急がなくては個人投資家が「消滅」してしまう。

「27年ぶり」続かず
「いきなり損なんて憂鬱」。

19日に新規株式公開(IPO)したSB株を冬のボーナスで購入した札幌市の40代女性は嘆く。初値から公開価格(1500円)を割り込み、1割強損を抱える波乱のスタート。

株式市場から吸収した過去最高2・6兆円の出し手は9割方が日本の個人投資家だ。

待機資金であるマネー・リザーブ・ファンド(MRF)以外の「ニューマネー」も預貯金などから動いた。

延べ90万人ものSBの株主。

IPOで成功体験を得て、他も物色する順回転が生まれれば日本株市場の心強い援軍となる。

逆に塩漬け化すれば、長らく相場の重荷となる「第二のNTT株」になりかねない。

折しも日経平均株価はSB上場の翌日に今年の安値を更新。

7年ぶりに年間で下落することが確実だ。10月には一時、27年ぶり高値まで上昇したが、この間も個人投資家は売り続け、海外勢の買いに対し6年間で約27兆円を売り越した。

上がれば売り、下がれば買う「逆張り」と呼ばれる投資行動に加え、売りの底流には投資家の高齢化がある。

高度経済成長やバブル経済という右肩上がりの原体験を持つ層が投資の表舞台から去りつつある。
日本の個人株主数は、1人で複数株持つ人の口座の「名寄せ」後で1900万人程度とみられる。この個人投資家たちの年齢に関する正確なデータはない。ある大手証券会社の平均年齢は「60代後半」。関西を地盤とするある中堅証券では「70歳を超えた」という。
高いリスク選好度
そもそも日本の人口の4分の1が65歳以上。約1860兆円の家計金融資産の過半がこの層に集中し、さらにその半分は75歳以上が保有する。しかも株式や投資信託などのリスク資産を多く持つ。投資の鉄則は「若いうちはリスクを取れ」だが、日本では逆。「リスク資産の比率が最も高いのは70歳以上」という。
その額およそ110兆円強――。野村資本市場研の推計では全体で約280兆円規模の家計のリスク資産の4割を70歳以上が保有するという。かなりの部分は子どもなど次世代の運用に引き継がれず、ある日「蒸発」しかねない。
「先月は1本(=1000万円)、その前は3本。億(円単位)も珍しくない」。都内の住宅地勤務のある大手証券マンは語る。株や投信で運用していた顧客の預かり資産が一気に減少する例が増えているという。
舞い込むのが相続に伴う「出金要請」。担当の顧客としばらく連絡が取れないと思えば亡くなった後。相続人がそのまま株や投信で運用してくれればいいが、分けやすさの利点からも現金化されがち。同じシニアの金融資産でも、預金が取り崩しで徐々に減るのに対し、株や投信は「一気に減る」特徴がある。「業界全体では(相続対象資産の)3割ほどが消えていく」との厳しい見方もある。
投資の歯車を大きく回さない限り待つのは先細り。シニア層の資産を日米で比較すると差は歴然とする。日本の70歳以上の世帯が保有する金融資産額は1994年から14年までの20年間で横ばいどまり。一方、米国の同年代はほぼ同期間に3倍に増やしている。
米国株高という追い風が大きいが、可能にしたのが「株など値下がりリスクのある資産は長期保有してリターンを育てるという『常識』」。卵が先か、鶏が先かの議論だが、短期の値動きに一喜一憂しない投資家が増えれば株価上昇を支える。
時間を味方に付けられる次世代投資家にとって、下落は仕込みの好機。道具立ては整い芽吹きもみえる。
今年始まった積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)は年内に100万口座を超え、来年には比較的大きな日本株投信に匹敵する1千億円規模の資金流入を生みそう。若者になじみの電子商取引(EC)や携帯電話の利用で得たポイントを充当する投資や、スマートフォンの操作で完結する少額投資など新サービスも広がる。
適温相場に別れを告げ、貿易戦争が続く中で消費税増税も始まる19年。逆風を跳ね返す「投資力」の育成に残された時間は、長くない。

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