経営者リスクで株下落も ゴーン元会長退場の余波

経営者リスクで株下落も ゴーン元会長退場の余波

日産自動車の株価はカルロス・ゴーン元会長が金融商品取引法違反容疑で逮捕されたにもかかわらず、逮捕前に比べて3%安と底堅い。ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点から注目される企業ではなかったことが、幸いしたようだ。ただ、ファーストリテイリングなどカリスマ経営者を抱える企業の株価には値下がりが目立つ。足元の業績はいいが、経営者に何かがあった場合のリスクを投資家が意識し始めたのかもしれない。
もし日産のESG評価が高かったとすれば、ESG投資に取り組んでいる世界の機関投資家が大量に株式を保有しており、トップ逮捕の報に接して手放す動きが相次いでいたかもしれない。しかし、実際にはあまり持っていなかった。指数算出会社の米MSCIは9月に日産のESG格付けを最低の「CCC」に引き下げていた。株式の持ち合いや取締役会の独立性などガバナンス上の問題が多かったためだ。
公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が日本株運用で採用している4つのESG指数の構成銘柄をみても、日産は2つの指数に採用されるにとどまっている。「FTSE Blossom Japan Index」と「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」だ。トヨタ自動車やマツダは4つのうち3つの指数に採用されている。日産はやや見劣りがする。
日産株が下げ渋っているのは、ほかにも理由がある。もともと日産株は配当利回りが高いことで知られているが、20日に一時6.5%安の940円まで下げた場面では、予想利回りが6%を超え、配当重視の個人投資家らの買いを集めた。2011年3月期に復配したあと、7期連続で増配をしてきた実績もある。ゴーン元会長の支配を脱して再出発することへの期待もあったかもしれない。
ただ、「今後、ルノーと日産との対立が深まり、3社連合が迷走するリスクも考えておく必要がある」(楽天証券経済研究所の窪田真之所長)。日産の欧州販売が大きく落ち込めば、減配に追い込まれるかもしれない。三菱自動車の株価はゴーン元会長の逮捕前に比べると3.3%低く、仏ルノーは3.7%低い。3社連合が揺らげば、この2社の経営の先行きも不透明になる恐れがある。
ゴーン元会長の逮捕は株式の投資家に2つのリスクを改めて感じさせた。1つは経営陣が不祥事を起こすと、ガバナンスが悪い企業としてレッテルが貼られてしまうことだ。ガバナンスの改善が確認されるまで、ESG指数には採用されないから、指数に連動するパッシブ運用の資金で株式を買われなくなる。アクティブ運用の機関投資家もネガティブ・スクリーニングの観点で、投資対象から外す可能性がある。
世界のESG投資額の統計を集計している国際団体のグローバル・サステナブル・インベストメント・アライアンス(GSIA)によると、16年初めの世界のESG投資残高は22兆8900億ドル(約2600兆円)で、運用資産全体の26.3%を占めている。日本は16年時点では4740億ドルにとどまったが、日本の年金基金が最も関心を持っている投資戦略でもあり、直近では大幅に増えている可能性がある。
もう1つは企業の成長を引っ張っているカリスマ経営者に、いつ何が起きるかわからないというリスクだ。不正行為はともかく、事故や病気で退場ということは常にありうる。有能な後継者が育っていなければ、成長路線が止まってしまうかもしれない。米国でも9月に米証券取引委員会(SEC)がテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)を証券詐欺の疑いで提訴したときには、辞任に発展するとの見方から、株価が急落した。
ゴーン元会長の逮捕はカリスマ経営者がいる著名企業への投資リスクを感じさせたようで、東京市場ではファーストリテイリング、日本電産、ソフトバンクグループなどの株価が下落した。今後、カリスマ経営者でも行動をきちんとチェックできるように、企業統治の強化が要請されるだろう。取締役会議長とCEOとの分離などが求められる可能性もある。
経済産業省が9月28日にまとめた「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)の改訂版では「自社の取締役会の役割・機能等を踏まえて、誰が取締役会議長を務めることが適切かを検討すべきである。その際、取締役会の監督機能を重視する場合には、社外取締役などの非業務執行取締役が取締役会議長を務めることを検討すべきである」と分離を促している。
株式相場は22日から始まった米国の年末商戦を見守る動きとなっている。序盤では実店舗は前年を下回っているが、ネット通販は2割程度増えている。両者を合わせ、商戦全体では前年を上回る見通しだ。米調査会社コンファレンス・ボードは27日に11月の米消費者信頼感指数を発表するが、10月の指数は137.9(1985年=100)と00年9月以来18年1カ月ぶりの高水準となっており、個人消費は勢いづいている。
年末に向けての株価動向を決めるもう一つのイベントは、30日から12月1日にかけてアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて予定される米中首脳会談だ。さまざまな情報が入り乱れ、米中の折り合いがつくのか、決裂するのか予測しがたい状況が続いている。折り合えば、安心感から世界の株式相場は大幅高になるだろうが、見切り発車できるような状況ではない。

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