150カ国で被害1兆円超す ビジネスメール詐欺横行

150カ国で被害1兆円超す ビジネスメール詐欺横行

取引先や同僚を装ったメールで金銭をだまし取る「ビジネスメール詐欺」が世界で横行している。詐欺グループは国境をまたいだネットワークを持っており、事件に関与した疑いで日本人が逮捕されたケースも。ここ5年間の被害は世界で1兆円を超えるともいわれ、専門家は「日本企業も標的となっている」と警鐘を鳴らしている。
世界中に送金先
「自分の取り分は15%で、引き出した残りの金は日本に住むナイジェリア人に関西国際空港で手渡した。その先のことは分からない」
米国の非政府組織(NGO)がだまされて送金した9300万円を不正に引き出したとして、仙台市で中古品輸出会社を経営する日本人の男(59)が7月、組織犯罪処罰法違反などの疑いで警視庁に逮捕された。
詐欺グループは、NGOのパキスタン支部の職員が使っているメールのアカウント情報を事前に入手。この職員になりすまし、米国の経理担当者に「太陽光パネルを購入する」とメールを送って1億円余りの支払いを要請した。送金先として指定されたのが、男の会社名義の邦銀口座だった。
男の関連口座には2016年以降、他にも米国やアジアなど8カ国の10社から詐取したとおぼしき6200万円の入金があった。「詐欺グループは詐取金の送金先を世界中に持っており、その1つが男の口座だったようだ」(警視庁幹部)
同庁はその後、口座から引き出した現金を男から受け取った関西在住のナイジェリア人らを逮捕。米連邦捜査局(FBI)も、同じ事件に関わった疑いで複数のナイジェリア人を逮捕している。
ビジネスメール詐欺の代表的な手口では、本物と酷似したアドレスや不正入手したアカウントを使って企業の幹部・同僚、取引先になりすまし、虚偽の名目で送金を指示する。事前に標的周辺のパソコンやメールをのぞき見し、数カ月にわたって業務内容などを「監視」したうえで犯行に及んだとみられるケースも珍しくない。
FBIが公表しているリポートによると、13年10月~18年5月の間に、資産家などの個人が狙われた事案も含めて約150カ国で約7万8千件の被害が発生。被害額は計約125億ドル(約1兆4000億円)に上った。詐取金の送金先は115カ国・地域に及び、中国や香港の金融機関の口座が目立つという。
被害が多発している米国の司法省は1~6月、ナイジェリアやカナダ、インドネシアなどの当局と協調し、メール詐欺に関わった疑いのある数百人を対象に捜査を展開。この結果、各国で計74人が逮捕された。
国境をまたぐ組織的なサイバー犯罪の摘発は困難だが、「抑止のためには捜査と摘発を重ねていくしかない。被害が拡大するなか、米国などの当局も本腰を入れている」と、日本の警察関係者は話す。
メール詐欺の被害は日本でも14年ごろから報告されるようになり、17年には日本航空が取引先を装う相手に約3億8千万円をだまし取られる事件が起きた。
日本語メールも
トレンドマイクロが18年6月に実施したインターネット調査では、日本の企業や行政機関で経理責任者などを務める課長級以上の約1千人の約4割に、詐欺メールの受信経験があることが明らかになった。
虚偽の送金依頼を受けたことがあるのは253人で、メールを信じて送金した人が22人いた。狙われているのは金だけではなく、209人は従業員の個人情報や非公開の決算、新製品などの情報を求められ、17人が実際に送信してしまっていた。
経済産業省の外郭団体、情報処理推進機構(IPA)セキュリティセンターの伊藤博康氏は「これまでの詐欺メールは英文が主だったが、18年に入ってから日本語で書かれたメールも確認されている」と指摘。「国際的に活動している企業だけでなく、国内でビジネスをしている日本企業、日本人も狙われ始めている」と警告している。

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