トルコリラ9カ月ぶり安値 シリア緊迫 緩和観測も売りに拍車
外国為替市場でトルコリラが売られている。対ドルでは12日に約9カ月ぶりの安値を付けた。ここにきてリラ売りを促しているのは、隣国シリアとの軍事衝突だ。一方、19日に金融政策決定会合を控えるトルコ中央銀行は、エルドアン大統領の圧力もあって追加利下げ観測が強まっている。リラは当面、下値を探る展開との予想が多い。
リラは12日に一時1ドル=6.06リラ台前半と2019年5月以来の安値まで下げた。新型肺炎の懸念後退や米経済の堅調さがドル買いを誘った面もある。だが、トルコリラ自体にも売り材料が目立つ。その1つがシリア情勢の緊迫だ。
シリアのアサド政権軍による同国北東部イドリブ県のトルコ軍拠点への10日の砲撃に対し、トルコ側は大規模な報復攻撃に出た。アサド政権の後ろ盾であるロシアとの協議では「報復を継続する」と強硬姿勢を示したもようで、攻撃の応酬は激化の可能性が高まっている。
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トルコ中銀による追加利下げ観測もリラ売りに拍車をかけている。1月に5会合連続の利下げに踏み切り、1週間物レポ金利は0.75%引き下げて11.25%とした。エルドアン大統領は金利が下がれば物価も下がるという独創的なロジックを掲げ、以前から1ケタ台の金利を求めている。
エルドアン氏の娘婿であるアルバイラク財務相は7日に「国営銀行はローン金利を8~10%へと引き下げることに同意した」と発言したと伝わった。「大統領の圧力で中銀の政策運営が縛られている」(第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミスト)との見方もあって、19日の会合も利下げに踏み切るとの見方が市場では優勢だ。
3日公表の1月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比12.15%と市場予想を上回った。トルコ中銀は1月30日に公表した四半期インフレ報告書で、物価見通しについて20年末に前年比8.2%上昇、21年末に同5.4%上昇と19年10月の前回報告から据え置いた。
SMBC日興証券の平山広太・新興国担当シニアエコノミストは「足元の水準を踏まえると、中銀の見通しは楽観的」とみる。同氏の試算ではトルコのCPIの前月比(年率、季節調整済み)はトレンドとして2ケタの伸びが続いており、「前年同月比でみても低下余地は10%程度までの可能性がある」と指摘する。実勢を軽視した過度な金融緩和がリラの下押し要因になると警鐘を鳴らす。
CPIの大幅な上昇を踏まえれば実質金利はマイナスに沈んでおり、海外投資家は名目金利がいくら高くてもリラ買いには動きづらいのが現状だ。2月も利下げに踏み切れば、実質金利のマイナス幅はさらに拡大しリラ安圧力を一段とかけるだろう。
「(トルコと経済的結びつきの強い)欧州の実体経済の弱さもリラ相場の重荷」(第一生命経済研の西浜氏)との声がある。米国株が最高値を更新した12日のリスクオン局面でも売られたリラは「目先は(昨年5月に付けた直近安値の)6.2リラ台までリラ安が進む可能性がある」(外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長)と警戒する声が出ている。
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