新型コロナ肺炎 世界の企業の信用力に影
新型肺炎の感染拡大が、世界の企業の信用力に影を落としている。アジアの航空会社やカジノ運営会社などが資金調達のため発行した社債に売り圧力がかかる。格付けの低い債券で運用するファンドからは資金が流出傾向だ。世界的な人の移動やレジャー需要の停滞で、企業の現金創出力が揺らぎかねないとの警戒感がくすぶる。
中国の航空大手、海南航空の人民元建て社債が売り圧力にさらされている。調査会社リフィニティブによると、2021年満期の社債は、国債に対する金利上乗せ幅(スプレッド)が20%を超える。上乗せ幅の拡大は社債の信用力低下を意味する。負債比率が高い同社は、新型肺炎による航空機の搭乗率の急減が大きな打撃となりかねない。
大韓航空のドル建て債も上乗せ幅が拡大傾向だ。47年満期の社債のスプレッドは1月下旬から拡大し始めた。中国路線を擁する航空会社は需要消失に直面している。現金収入が減り資金繰りに悪影響を及ぼしかねない。
2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行時には、アジア地域で航空各社の収益が急減した。米格付け会社S&Pグローバル・レーティングのフィリップ・バガリー氏は「新型肺炎の感染拡大により、SARSと同様の影響が起きうる」と指摘している。
カジノ産業も影響が大きい。マカオは2月5日からカジノ関連施設の営業を半月間停止とした。マカオでカジノを営むMGMチャイナ・ホールディングス、ウィン・マカオ、サンズ・チャイナの社債の金利上乗せ幅は、1月下旬にそろって急拡大した。マカオ政府は感染拡大を防ぐため中国本土からの入境を制限しており、訪問客は激減。カジノ各社の業績を下押しするのは避けられない。
新型肺炎の影響は原油価格の下落を通じて米国エネルギー業界にも飛び火している。景気懸念からニューヨーク原油先物相場は1バレル50ドル近辺まで下落した。
米国ではシェールオイル採掘企業が、低格付け債で資金調達する例が多い。債務不履行(デフォルト)リスクを敬遠し、投資家の資金は、シェール関連企業など米国の低格付け債で運用する上場投資信託(ETF)から逃避する。低格付け債で運用する主要なETFからは1月下旬に資金流出が加速した。
大和証券キャピタル・マーケッツシンガポールの芹沢健自シニアクレジットアナリストは「ただでさえ増えていた中国企業の債務不履行が新型肺炎の影響でさらに膨らみかねない」と懸念する。
ただ新興国中心に利下げが相次ぎ、市場ではリスク警戒ムードが和らぐ兆しも見える。一部の社債には買い戻しも広がっている。
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